理事長メッセージ

 新理事長挨拶
第15回通常総会意見交換会 就任挨拶より引用
 このたび、理事長に選任されました、野中でございます。
当組合発足当時を振り返りますと、全国では建設業が異業種との連携を図る取り組みが行われ、県下各地でも多くの林建協働法人が設立されたことは、記憶に新しいところでございます。  その後は様々な課題を抱えながら多くの事業体が廃止に追い込まれ、現存している事業体は極僅かと伺っております。
 そうした中、当組合は自ら事業を立ち上げ、年間2億円を優に超える事業量を安定的に確保できるまでの組織に至りました。この基盤を築いて頂いた、大山前理事長を始め各理事、そして事務局の熱意とご努力に、改めて敬意を表しますと共に感謝を申し上げます。また、当組合に対しまして、これまで格別のご指導・ご支援を賜りました、行政並びに関係機関の皆様に対しましても、改めて感謝を申し上げます。
 このような全国まれにみる当組合の理事長として重責を引き継ぐこととなり、身が引き締まる思いでございますが、新役員とも協力しながら誠心誠意努力してまいる所存であります。今日まで14年間当組合を支えてこられた先人の方々の想いに報いる為にも、この火を絶やさぬ決意でおります。どうか皆様のご指導ご鞭撻、そしてご協力を宜しくお願い申し上げます。

 さて、我々建設業を営む者としては、国・県・市から発注される公共事業を請け負う傍ら、常日頃、災害対応にも備える体制を維持しているところでございますが、国の国土強靭化計画も地方の土木事業にすべからく直結するわけでもなく、年々わずかながらも減少の傾向が見受けられます。一方で、森林・林業においては、今年度より新たに森林環境税の課税が開始される中、森林環境譲与税の配分も見直され、高山市においては約2億7千万円が配分されると聞いており、今後の森林整備事業に期待をしているところでございます。
 また、これからは森林サービス産業や国が進めるJ-クレジット、そして岐阜県が進めるG-クレジット制度といった、新たな需要の高まりもあり、一層拡大傾向にあるものと推察致します。加えて、森林内の路網整備の他、近年では森林整備と連携した治山事業の推進施策などにより、森林土木工事が増加の兆しがあり、建設業ならではの役割も新たな局面が期待できるものと思われます。
 当組合の事業を遂行しながら、森林・林業の発展に向けた取り組みを強化することで、森林の新たな価値が生まれ、ひいては当組合の役割と認知度を更に高めていきたいと考えております。
 飛騨地域における技術力と労働力の拡充を含め、社会貢献を果たしていく所存でございますので、皆様には、引き続き変わらぬご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。
  最後になりますが、森林・林業の更なる発展と、関係各位の皆様のご健勝を祈念申し上げ、就任の挨拶とさせて頂きます。

組合の歴史・活動

 当組合は、当時の景気の低迷や公共工事の削減等に伴い、厳しい環境にある建設業者の雇用の確保と飛騨高山地域における地域の森林管理不足の課題を解決すべく、これまで連携のなかった林業と建設業が積極的に協働し、ビジネスモデルとして確立させることを目的に設立しました。

 平成20年より建設業者が林業に携わるための勉強会を重ね、平成22年に10社の建設業者と地元の森林組合とで組織化しました。当時は建設業者と林業者とが手を組んで森林整備をしていく事は難しいと思われる面もありましたが、事業の領域をしっかりと区別し、明確な役割分担を行うことで問題をクリアにしてきました。森林組合と協調して、建設業の業界単位での本格的な参画による成功例は全国的にもまれであり、建設業の副業化推進に向けた事例として各方面から注目されています。

 組合の主な事業は、森林整備関連事業や林道及び作業道整備関連事業等の共同受注及びそのあっせんです。現在は森林経営計画制度等に基づき、企画提案し承認された事業を中心に森林組合や市からの事業を組合で受注し、組合員が連携して作業を行っています。白川村を含む飛騨高山地域は、森林面積が235,000haと岐阜県の約2割となっており、将来的にはこの民有林を森林組合とともに集約化し、森林整備をすすめていければと思っています。

組合が目指す方向性とは

 当組合では、従来型の森林整備だけでなく、先進的な林業〈森林づくり〉に取り組みたいという思いがあり、林業の先進国であるドイツを参考にした森林づくりを導入することにしました。行政からのサポートもあり、ドイツフォレスターを招いての研修会の開催や、ドイツ・スイス林業の視察などを行い現在は一部に欧州型作業道を取り入れています。

 また、人材育成を目的として組合員企業の従業員の中から『森林施業プランナー』の育成を行っています。土木工事は決められた工程を工期内で完成することが求められますが、林業は〝この森林を将来に向けてどう育てていくか”をみずからが考えて作業道の設置をしたり、間伐を行っていく必要があり、若手従業員からは林業が面白いとの意見もあります。

 森林組合や県・市の協力を得て森林づくりやその管理についてしっかりと勉強させてもらいながら、一方で、建設業のノウハウを生かして従来とは異なる壊れにくい作業道を作設して地域に貢献するとともに、林業における安全管理や施工管理などを示してきました。そして技術やノウハウだけでなく、人間関係も構築することでお互いに信頼関係ができ、順調に組合運営が進んでいます。

 他県では機械の導入といったハード面から入っていく傾向も見受けられますが、我々は林業の勉強や森林施業の仕組みづくりといったソフト面からスタートしました。林業と建設業の両方を兼務するのではなく、それぞれ従事する者を区分けして行う事が重要と位置づけています。

 地道な活動の結果、今では全国から視察や講演要請があり、我々の作り上げたモデルを情報発信することが出来ています。飛騨地域の広大な森林を適正に管理し、豊富な資源を有効に活用していく事で、健全で豊かな森林づくりに貢献していきたいと考えています。